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2014年7月 9日 (水)

なくなってわかるもの。

20140709_2

近くに大型スーパーが出来たのは正直嬉しい…けど…
その代わりに、くだらない日常の話しをしながら買っていた、
お豆腐屋さん、八百屋、肉屋、何でも屋さんの店が消えていった。

大型スーパーは、値段が安い。確かに家計が助かる、便利だ。
でも…
失った物も大きい。

さっき書いたけど “くだらない日常の話し” をする事って、
とても大きかった。

人と顔を見て話す。って結構…じゃなく凄く精神的に楽になる。

「なんか、あっさりした物が食べたくってさぁ〜〜
 でも、今、仕事してて面倒なんだぁ」
「じゃ、これでいいじゃない。あと、青菜添えてさ」
「ああ、そっか!」
「後、豚バラの薄切りに、ほら、その青ネギ切って
 ポン酢かけりゃ〜いいよ。2品で十分!後、みそ汁は作りなよ」

こういう、会話をどんだけしたかな…

お豆腐屋さんのお惣菜は美味くて…
作るのが面倒な、副食までいろいろ。

でも、そうゆう店も、ほとんどなくなった。

夕暮れ時にシャッターがしまった、その店の前にボォーと立ち、
オバさんや、オジさんの言い合いに笑ったりした事が
頭の中の遠い場所から聞こえて… 裏に回り、
戸を叩いても誰も出て来ない。

諦めて、トボトボ歩きながら、あの人達に、
凄く、精神的に助けられていた事を感じた。

八百屋さん、お肉屋さん、何でも屋さん…
もうない。


家も、そうだなぁ。
数年前まで、近くに古い家が結構あって、少し遠回りなんだけど、
散歩や、買い物に行く途中に、その数件の家の前を好んで歩いた。

外見が向田邦子の物語に出てくる様な玄関、台所の窓の家。

凄い遠くまで聞こえるテレビの大音量の家。

盆栽だらけの家。

心配になったのは、大音量のテレビの音が聞こえなくなったとき。
でも、ピョンと飛び跳ねたら垣根の向こうに、おじいちゃんのパンツが
干してあったので安心した… 毎回、ピョンと飛び跳ねるたび、
何か家の中が変わっていってる感じがした。
家の中は見えないんだけど…
そのうち、雨戸が閉まり続けた。音も、人の気配もない。
思わず、しゃがみ込んでしまった。
そして、あっという間に、その家はなくなり、
椿の垣根の代わりにヨーロッパ風で、
庭は沢山の色とりどりの…ガーデニング?って感じに変わった。

盆栽だらけの家も、いつの間にかコンクリートの家に変わった。

向田邦子風の家の台所の窓から微かに見えた、
おばあちゃん姿の家はマンションに変わった。

それから、買い物への、散歩の道も変えた。


商店街のお店の人達との、お喋り、
夫婦ゲンカなのに、つい笑ってしまうお豆腐屋さん夫婦の会話。

何でも屋さんの、
「今日、必要なの?」
「うん」
「仕方ねぇーな。後で運んでやるよ。住所書きな」
「サンキュウー!」
とても助けられた。

目で見ていた家も、
仕事で苛ついていた時、夫婦喧嘩した時、
その家の前を通るとふっと、気持ちが落ち着いたり…

あの時、自分ではわからなかったけど、
それは今もかもしれない… 
毎日、ちょっとした事に助けられて
生きてるのかもしれないと思った。

外に出ない時は、
時折、窓から風が吹いて首元を涼しくしてくれたり、
雲が、空の色、夕焼けが、夜空が…

でも、寂しい事ばかりじゃない。
最近、近くにマンションが沢山出来、子供達の声が増えた。
元気が良い!

「だるまさんが転んだぁーー!!あ!動いた!」
「動いてねーよ!」

大笑いした。
まだ、続いているものものもあるんだ。と、それと、
相変わらず女が強い。

我が家も女が、オレが強い。
でも、それは… まぁ〜家人が良いヤツだからかな?

では。

2014年1月 8日 (水)

近いのに遠い

鳥の鳴き声も聞こえない様な寒い朝
すぐ横で眠っている いつもの寝顔
いつもと同じ何も変わらないのに
こんなに側にいるのに
頬をさわろうとすれば、すぐにさわれるのに
そんなことも出来ないくらい、遠くにいるように感じた。

窓の外は、気持ちを先読みされてる様な
重たそうな曇が広がっている

「ああ、もう違う人がいるんだな」

突然そう感じた。

そんな事を思いながら窓外を見ていたら
起きる気配を感じて瞼を閉じた
そっとベッドを降りて服を着る気配を
耳で聞いていた

(4年か…)

いろいろ思い出すものだな…
二人で聞いたいろんな曲と同時に
二人で過ごした…別に特別な事でもない
ふだんの表情や会話が浮かんで来る

ガチャ

ポケットから車の鍵が落ちたとき
目を開けた

「夜、電話するね」
「うん」

頬に軽く触れられた手が、まだ温かかった。

「じゃ」

一人になり、布団を頭までかぶり寝た。
起きたら空は晴れていて…
さっき感じた遠い距離感だけが
肌に、気持ちに残っていて
部屋にもそんな空気が、より広がっていた。

その夜、電話はあった。
いつもと同じ様に話したり笑ったりして切った。

でも、もう会うことはなかった。

数ヶ月、夜になると何度も電話に目がいったけど
かけたとしても、あの遠い距離感を埋める事は
出来ないだろう…と思い、そのまま時間が経っていった。

どちらかが何も言い出さなくても
こんなサヨナラの形もあるんだな…

と、感じた遠い話。

2013年11月 5日 (火)

秋の夜

家族というのは常に変化している…

そんな事を思ったのは、
私が中二で、兄が高一の時、
父親と気が弱い兄が揉み合いのケンカになった…
そんな事は初めての事で、
父が兄を殴ろうとした時、反対に殴られて飛んだのは
父だった。

母も私も呆然とした…

その後、兄は家を飛び出して行った。
父は動かなかった…

母は、父の微動だにしない姿を、ただ見つめていた。

…感じた。今私がこの場所に居てはいけない。ってこと…

母は動かない父に近づこうともせず、
「ご飯作るね」
と言った。

私は、自分の部屋へ行った。

家族。

母と父は夫婦だ。

母がその後、父に対してどのような言葉をかけたのかも
どのような行動を取ったのかも知らない。

父は男で、兄も男だ。
という事を…そして、母も女で、私も女なんだ。
という事を、遠い秋の夜に知った。

かしこ

2013年7月12日 (金)

つま先立ち

どれだけ暑くても、夜明け前の、
ある一瞬。とても冷たい風が吹く。

冬の明け方は一瞬、温かい風が吹く。
それは…たぶん…その時の自分の気持ちなんだろう。

歳と共に

感じる事、
見える事、
過ちだった事、
戻りたい事、
戻っても酷くなる事…
人の話しを…黙って聞くことは意味なくても、
意味ない面白さがあったり。

ある夏の話。

…これから東京は、『お盆』。
来月の今頃は、民族移動、田舎の『お盆』。

田舎の台所は大きい。

皆で食事、後片付け…そして、始まる。

「ウチはね~」「ウチはさ」「あら、そう」

うるさいくらいの会話が笑い声とともに飛び交う。楽しそう。
なんで、こんなラジオの人生相談みたいになるんだろう?
でも、

「…うるさいけど…面白い…ぷっ」

そんな声を聞きながら
台所にある大きな窓、いくら背伸びをしても
背が小さくて空しか見えない窓外を、
つま先立ちして見ていた。

毎年、毎年…田舎は変わらない。

…ある日…びっくりした。

仲良いと思っていた、

『…うるさいけど…面白い…ぷっ』

となっていた話しの内容に…あ、違うんだ、
お互いを少し…だいぶ…
憎みあっているんだって事に気づいた。

…ひとつ気づくと、いろいろなものが見えてくる。
一言、一言のあれこれ…

「…この人達戦っている」

母も含め。
その小さな戦いに気づいた私は…

『田舎』

が嫌いになった。
忘れていた、田舎の大きな窓ガラスの外を見た。
つま先立ちもしていないのに、
いつもの散歩の道の緑の葉が見えた。

毎年、背伸びしても空しか見えなかったのに…

外に飛び出た。

散歩道で自分の目で見ていた緑の葉は、触ってみると
トゲトゲ、ビンビン!だった。

強〜〜っ!

母や、伯母さん達のよく動く口元が浮かんで
「ブっ!」と笑ってしまった。
だって、”トゲトゲ ビンビン“ は、あの、
台所の会話みたいなんだもん。

「どこまで張り合うのさ~」

笑った。

空しか見えなかった大きな窓からの風景も、
たった、1、2年の中で、オレの背が伸び、もう、
つま先立ちをしなくても、
いろんなものが見えたり聞こえたりするようになった。

『散歩の緑のトゲトゲビンビン葉』で笑えたから、
今でも田舎が好きなのかも。

かしこ

2013年2月 9日 (土)

友達

天井の木の木目って、いろんな顔に見えるな…
同じ木目でも昼と夜とでは違うか…怖い顔も普通に見えたり…
…いや、やっぱり怖いな…ガムテープで隠そうか…
「電話よ」
「え、…誰?」
「あれ?誰だっけ?男」
「兄貴?」
「だったら分かるわよ。同級生だとか言ってた」
「同級生?いつの?」
「知らないわよ」
「ふ〜ん。なんで此処知ってんだろう」
「ボケッと寝っ転がってないで早く出なさい」
誰だろう。
誰にしても面倒だなぁと思いながらのらりのらりと階段を降り、
玄関の下駄箱の上の黒電話の受話器を取る。
「もしもし」
「あ、俺」
「あ…」
「あのさ、これから行くよ」
「へ?」
「そこ何処?」
トントントンと軽快ないつもの口調に気が緩み
駅とバス停の名前を言ったら
「1時間後だな。バス停で待ってて。じゃ」
電話が切れた。
「誰?」
「同級生…来るって」
「此処に?」
「分からない。バス停で待ち合わせした」
「あら、片さなきゃ」
「……」
又、二階へ上がりごろんと寝転び、
天井の怖い顔に見える木目を見ながら時間を潰した。

「ちょっと、行ってくるわ」
「温かい格好した?寒いから」
「したした」
庭から出た。
寒っ。空を見上げるとどんより厚い雲、雪が降りそうだ。
約束した時間より10分程早くバス停に着いたら、
彼が立っていた。
「よう」
いつもの笑顔と、いつもの『よう』に少し懐かしく感じ、
ふっと笑ってしまった。
「なに笑ってんだよ」
「相変わらず、勝手だな〜と思って」
「お前に言われたくないよ」
「はぁ〜〜??」
「元気そうだな」
「元気だよ」
「元気じゃないよ」
「…なに言ってんの?」
「ま、座ろ」
「ここら辺、喫茶店とかないよ。畑ばかりだし」
「ここでいいよ」
「ここ?」
「ベンチあるじゃん」
「ああ…」
二人でバス停の横にある、ベンチに座った。
「ウチから結構近いな。30分くらいだった」
「そんなもん?」
「そんなもん」
「寒いから、叔母さんのとこ行こう」
「いいよ。ここで。行ったら、お前気使うだろ」
「…まぁ…ね」
「当分、ゆっくり休んだ方がいいよ。
 甘えられる所があるんだから使うときは使ってさ」
「……」
「しかし、見事に畑だらけだな。30分でこうも違うか」
「そうだね」
「でも、今のお前には丁度いいよ」
「なにが」
「空も広いし…静かだし…沢山寝た方がいいよ」
バスが止まる。
運転手が
ベンチに座っている私たちが乗ると思うのは当然なので、
バスが止まってドアが開いた。
彼がすっと立ち上がり、開いたドアに近づき頭を下げている。
「そりゃ、止まるよな」
「うん」
「次のバスで帰るわ」
「そう」
「家に電話したらさ、
  今、お前が居る電話番号教えてくれたんだ」
「……」
「あ。これ」
彼が小さい手提げの紙袋を私の膝の上に置いた。
「ここの豆大福美味いって、いつか言ってただろ」
小さい手提げの紙袋の〇〇堂という字をじっと見た。
「…ありがとう」
「おっ。おばあさんが来た、立て、立て」
「あ…」
私はその小さい手提げの紙袋を持ち、
彼はおばあさんに、「どうぞ、どうぞ」と、ベンチに座る様に、
さっきバスの運転手にペコリと頭を下げた様に又、下げた。
今度は、二人、ベンチの隣に立った。
「もうすぐ来るな」
「え?」
「バスだよ」
心がそわそわ仕始めた。でも、言葉がみつからない。
「あのさ」
「大福足りるかな」
「え」
「叔母さんち、何人?」
「えーー」
「6個しか買って来なかった」
「あ、足りる、足りる」
「あそ、よかった」
「……」
「また、電話するよ。あんまり頑張るなよ」
手提げの紐をぎゅっと握った。
彼が首をかかげ遠くを見た。
私も見た。
バスが来る。
彼が財布から小銭を出そうとして、私はその手を止めた。
伯母さんから貰ったバスの回数券を一枚差し出した。
「私じゃなくて、伯母さんが」
彼が私の顔を見て笑った。
私も笑った。
「だろうな」
バスが来た。
彼がポンと、私の肩を軽く叩きバスに乗り込んだ。
彼がいつもの笑顔で手を振っている。
私は、たぶんとても間抜けな顔をしていた様に思う。
バスを追いかけたくなったけど足が動かなかった。
バスがどんどん小さくなって見えなくなった。
誰もいなくなったバス停のベンチにぺたりと座り込んだ。
ふと気づくとバスが止まっていた。
私は慌てて立ち上がり、運転手さんにぺこりと頭を下げ、
豆大福が入った小さな手提げの紙袋を抱え歩き出した。
帰り道、
空を見上げると今にも雪が降り出しそうな空なのに、
分厚い雲の隙間から
見えないはずの薄水色の青空が見える気がした。
「空広いなぁ」
言葉がこぼれた。

その夜からなのか、いつからなのか、
天井の木目の怖く見えた顔も
見えなく…というか忘れていた。
それに気づいたのは
伯母さんの家を出て一人暮らしを始める前の夜だった。

彼とは、男と女として付き合う事はなかったけど、
同級生から友達になり、今でも交流は続いている。

終わり

2009年3月12日 (木)

遠い昔の話。

「朝焼けと夕焼け、どっちが好きだ?」
「あ!毛ガニある!頼んでもいい?」
「毛ガニ、ひとつ、お願い〜」
「なんで?」
「なにが?」
「何で朝焼けとか夕焼けとか聞くの?」
「どっちが好きだって聞いてんだよ」
「わかんない…」
「…わからない?…どうして?」
「……夕焼けは好きだけど、朝焼けってなんか…なんか…」
「なんか、何なんだ?」
「……いい。上手く言えない」
「言え。上手く言えなくてもいいから、
 自分が思った気持ちを話してごらん」

毛ガニ登場!

「夕焼けは、季節それぞれに…その時の天気でも違うし…
 え…とっ……今日の終りって感じで…」

「で?」
「…安心して、夕焼けの風景は見れるの…」
「で?」
「んーーー……」
「で?」
「…でも、朝焼けは…今日の始まりで…先が見えなくて…
 …いっけん夕焼けと同じように見えるけど…
 先が分からないから、安心して見れない……」

「で、どっちが好きなんだよ」
「朝焼け…」
「なんで?」
「先が見えないから、同じような風景でも…なんか…
 …ゾクッてする。ゾクッてするから…ただそれだけ。」

!!!!!!!!!!!

毛ガニのミソだけきれいに食い尽くしてる…
ない!もうない!オレの食う、カニミソがない!
叉、毎度の言い合い!バトル!

「足食え」
「くそじじぃ…」
「なに?」
「くそじじぃ」
「そうだ。じじいだ。
 この前、朝、公園散歩してたの」

「どうでもいいよっ!」

毛ガニの足の身を取ってんだ!

「聞け!」
「うるさいっ!」
「池があってさ、朝焼けが、そのまま水面に写って
 綺麗だったんだよ。1時間くらい見てた」

「変わっていくんだよね。一瞬、一瞬で」
「そう!そう!」
「動けなくなるよね」
「そう!そう!そう!そう!そうーーっ!!!」
「……んで?」
「カメラ買った」
「はぁ?!」
「撮りたくなって」
「……」
「なんだよ、その顔…」
「宝の持ち腐れだ」
「なんだーーっ!」
「直ぐ飽きるよ。いらなくなったらカメラ頂戴」

!!!!!!!!!!!

「あっ!」
「なんだ?」
「カニミソ自分だけで食ったくせに、人が
 一生懸命取った足の身も食うなっ!」

「だったら、取りながら食え♪」
「おばさん!中トロの刺し身下さい!!!」
「それやめて、赤身の刺し身にして〜」
「!!なんでっ?!」
「太る」
「くっ…」

それから、一ヶ月後、
その、じじぃから大きな封筒が届いた。
中を開けると…

大きな写真が1枚、入っていた。
それと、手紙。

『お嬢。一ヶ月、毎朝、頑張りました。
 どうだ!
 お前が注文出した通りだろう!カメラはやらん!』

それが、この写真。
Sukidayo_3
(写真・安田匡裕)

毛ガニの後、赤身の刺し身を食べながら、
確かに…オレは言った。

「シャンパン色より…もう少し濃い、
 淡いピンク色の朝焼け…
 で、その朝焼けが水面全部に写ってんの。
 その水面に…鳥…なんでもいい…でも、二羽とかは嫌。
 家族、大家族が羽繕いしてる…そんなの好き」

じじぃ。やるな。

嬉しくて…返事書いた。ハガキに。
字がはみ出るくらいに。

『最高ぉーーーお!』

ありがとう。

今日、久々に、じじぃに会った。
相変わらずの、顔してた♪

2007年7月27日 (金)

雀の丸焼きの串焼き

Photo_115
我が家にやっと平穏な空気が少し戻ってきた。
久しぶりに畳の部屋にゴロンと寝ころんで、
ボーッとしていた。
ベランダに雀がいた。
なんだかとてもコロコロしている。
雀って、こんなにボテっとしていたっけ…
と思いつつ、雀がぴょんぴょん歩くの見ていた。

オレは小さい頃から雀が好きだ。
母は雀の丸焼きの串焼きが大好物だった。

旅行に行った時、母は、お店のメニューに、
『雀の串焼き』を見つけると必ず頼んだ。
お皿に串に3羽の雀が、そのまま焼かれて、毛はないけど…
ちっこいコロっとした頭の形が悲しかった…
母はバリバリ音をたて、雀をご機嫌に食べた。
「あんた達も食べてごらん」
と、ニコニコしながら勧めるのだが、
父と兄とオレは食べられなかった。
それどころか自分たちが頼んだ食事さえ、
バリバリバリバリと軽快に雀を食べる音に気分が悪くなり
お箸が止まった。
母親だけ、嬉しそうに雀の丸焼きの串焼きを食べた。
なんか恐かった。

小学5年生の時、台風が去った後、道に雀の雛が落ちていた。
毛がまだ生えていなくて気持ち悪かったけど、
『ひよこ』と命名し、ミミズとか虫を探して食べさせ育てた。
父が鳥籠を竹で作ってくれた。
そのうち、ひよこは手乗り雀になった。
いつも、自分の肩に乗せて歩き自慢していた。
母は、オレの肩のひよこを見ると、「雀食いたいわ〜」と言った。

ある日、学校で一泊二日の移動教室があり、
家を空ける事になった。
普通なら、ひよこの世話は母親に頼むのだろうけど、
雀の丸焼きの串焼きが大好物の母に恐くて頼めず、
近所に住む、おばあちゃんに餌とかの世話を頼んだ。
移動教室の帰り、おばあちゃんの家にひよこを迎えに行くと、
おばあちゃんが、空になった鳥籠を持ってきた。
「餌をやろうとしたら逃げた」と言った。
泣きながら、ひよこがいなくなった鳥籠を抱え家に帰った。
母は「おばあちゃんを責めちゃだめだよ」と
ご飯を作りながら後ろ姿で言った。
泣きながら母の背中をにらんでいたら
「食べてないよ」と、叉言った。
それから沢山泣いて、いつの間にか忘れていった。

中学生になった、ある日、母と庭の草むしりをしていたら、
雀が飛んできた。ぴょんぴょん歩いて何か食べていた。

突然母が、ひよこの話をした。
逃げたのは嘘だったと聞かされた。
オレがひよこをおばあちゃんに預けた翌日、
母とおばあちゃんと、一緒に住んでいる伯母さんと相談して、
ひよこを逃がした。
狭い鳥籠の中で一生を終えるより、
ひよこは普通の雀に戻るのが一番良い。
もし、逃がしても、戻ってきて来たら、そのまま飼い続けようと。
三人で、オレの泣き顔が浮かんで嫌な気持ちだったけど、
いち、にのさん!で空けたら空高く飛んで行った。
夕方まで、おばあちゃんが縁側に置いた鳥籠を
ちょこちょこ見ていたけど、ひよこは戻って来なかった。
伯母さんは泣いたそうだ。
「薄情な雀だ」と言って。

オレと一緒に、畑の持ち主の家まで行ってお願いして、
餌のミミズや虫を探して育てたからなぁ…

伯母さんの泣き顔や、おばあちゃんが縁側を覗いている姿、
大人三人が縁側で雀の入った鳥籠を前にして、
ああだこうだと話している様子を思い浮かべたら、
ちょっと笑ってしまった。

「そうだったんだ…毛むしって食べたのかと思ってた。
 雀の串焼き大好きなくせに、雀に優しいね」

母はジロリとオレを睨んだ。オレもジロリと睨んで、
二人で草むしりを続けた。
空が透明で青くて、
庭が緑できらきらしているのを今でも覚えている。

それからも母は、何処かに行った時、
雀の丸焼きの串焼きがあると必ず頼んで、
ご機嫌で、バリバリバリバリ音をさせ頭から食べ、
父、兄、オレの食欲を無くさせた。