フォト

お弁当メール・東京ガス

西の魔女が死んだ・公式サイト

8月のクリスマス公式サイト

『黒帯〜KURO-OBI』公式サイト

闇打つ心臓・公式サイト

  • 闇打つ心臓 Heart Beating in the Dark
    2006ロッテルダム国際映画祭 『オープニング作品』&『長崎俊一特集』/バンクーバー国際映画祭『特別プレミア上映』 /マルデル・プラダ国際映画祭 /韓国全州映画祭/ロンドン、ウィーン、サンフランシスコ、他、多数海外国際映画祭正式招待

『柔らかな頬』 原作・桐野夏生

ドッグス

  • ドッグス
    1999バンクーバー国際映画祭/ロッテルダム映画祭/ウィーン映画祭 他、多数 ★主演・水島かおり

ロマンス

  • ロマンス
    1996ベルリン国際映画祭/バンクーバー国際映画祭/ロッテルダム映画祭、 他、多数 ★主演玉置浩二・水島かおり・ラサール石井
無料ブログはココログ

« 粘る | トップページ | どうしても言えない言葉 »

2012年11月 4日 (日)

真夜中3時の夕飯

今、長丁場の仕事に入っている。
始めに決めた、規則正しく…は、あっという間に崩れた。

『ご飯作らない宣言!』

を、した。

『これから、各自、それぞれ自分で作り食べる!』

そしたら、目玉焼きしか作れない家人が、
「俺は切り替えがあった方が仕事がはかどるから、
 お前の分も作ってやるよ」

と、言ってくれた。
喜ばしき事なのに、ちょいと嫌な気がした。

集中している時に限って、家人が仕事部屋をノックする。
…だんだん、そのノックの回数が多くなる。
料理の質問だ。

『怒っちゃいけない。怒鳴っちゃいけない』
本当なら、
「うっせーんだーーぁあ!!」
と、飛びかかりそうな自分の気持ちを心の中で静める。

一度、どんな風に作っているのか台所を、そっと覗いた。

「……」

料理本を必死に見て格闘している。
しかし、いくら本通りに作ろうと思っても、
その時の肉の大きさ、魚の大きさってものがある。
夏野菜、冬野菜で柔らかさや堅さが違う。
調味料も、炒める、煮る時間に合わせて
加減ってもんが必要で…

でも、家人のその必死な姿を見て…
気持ちを傷つけないように教える事の大変さを、
初めて、この歳になって知った。

まだ、他人のがハッキリした事を言えるが、
家族に対して、身内に対して、
やる気を損なわず、優しく教える事の難しさ…
子供を育てている親は、さぞかし大変だろうなと思った。

「あ、それはオレが」
「いや、自分でやる」

凝り性な家人なので、言い始めたら聞かないので、
調味料の入れ方…初めから書いてある通りに入れないで、
最後に味を整える感じとか、
肉を炒める感覚とか、多々何とか教えた。

料理の腕がだんだん上がってきた。
最近は煮物も。

少し前、西の友姉から野菜がどっさり送られてきた。
家人は目を輝かせた…そして、

一昨日の夜、家人は意気揚々と
「今日はキノコとレタスの炒め物を作る!」
「(……レタスの炒め物なんて、とても難しいのに…
  最後の火の加減や手早さ…でも、黙った)」

出来上がった。

二人で
レタスがお皿の上でクタクタになり水分の上を漂っているのを
無言で見つめた。

家人、しょげる。
「……なんでだろうな…」
「まぁ、あれよ。
   レタスシャキシャキに炒められたら、店開けちゃうよ」

よくわからない励まししか出来なかった。

昨日の事は忘れたかのように、翌日、
「今日は鶏の照り煮を作るんだ!」
!いや、あのさ、照り焼きだけで良いと思う!!」
「照り焼きじゃ、芸がない」
(こいつ、昨日のレタスの件忘れたのか…)あ、そう」
「任せておけ!」
「照り煮ね…楽しみ…。(照り焼きと変わらないだろうが)

ふっと、時計を見ると12時を思いっきり過ぎている。
台所からは何も音がしない。
慌てて、台所に行くと、
家人がボーッと床にしゃがみ込んでいる後ろ姿。

静かに仕事部屋に戻り、声を殺し笑った。
そして、台所では…フライパンの中に今度は、
レタスではなく、長細く丸まり、
固まりとなった鶏肉が煮汁の中に漂うではなく
ドン!と2つ並んでいる。

家人、しゃがみ込んだまま、
「初めは、いい感じだったんだ、でも、だんだん
 
サツマイモみたく丸まってきて…
   どうしていいか分からなくなっちゃって……」

「そっか。鶏肉買ってきたままゴロンと入れちゃったんだね」
「うん。駄目なの?」
「う~ん。鶏をね、なんて言うのかな?
   包丁で斜めに入れながら肉を薄くするんだけど…
   難しいから…」

家人、勢いよく立ち上がる。

「どうやるんだ!!!」

Photo_2

「…こ、この状態だとボロボロになっちゃうから今度ね」

「……料理って奥が深いな」
「それは、どんな仕事でも同じでしょ?」
「そうだな」
「でも、大丈夫。鶏の中華風煮に変えられるから」
「……」
「ちょっとビールでも飲もうよ」
「俺、少し調子に乗ってたのかもな…」
「そんな事ないよ。たった数回でこんなに出来るの凄いよ」
「でも…」
「なんでも、失敗して、失敗して感覚掴んで行くじゃない、
 料理じゃなくても」

「……そうだな」
「でも、レタスの炒め物作るって言った時、あ、違う」
「なに!?」
「……すげぇーなぁ…って思った…」
「……」
「でも負けない精神は大切だよ!若さだよ!山ちゃん!!
「山ちゃんって誰?」
「え?あーー昔のCM、なんだか忘れちゃったけど」

それから2時間後くらいに、
柔らかく煮えたサツマイモの様な鶏肉の上に、
とろみのたれをかけて、
ほうれん草を彩り、
2人で美味しく食べた。

その時は、もう家人の顔は笑顔だった。

Photo_3

「又、明日、『鶏の照り煮』に挑戦してみるよ!」

オレは、固まった。
でも、家人の笑顔を見て、「何度でも食べよう!」
と、怖いけど思った。

そんな、真夜中の3時の晩ご飯でした。

かしこ

« 粘る | トップページ | どうしても言えない言葉 »